平成29年度、埼玉県公立高校入試が変わります!
昨年末…
埼玉県の教育委員会より『平成29年度埼玉県公立高等学校入学試験選抜における学力検査の改善について』という発表がありました。
『現中学2年生(2016年1月現在)から公立入試試験が変わります』という内容の発表です。
この変更…突然の公表だったため実はまだあまりよく知られていない情報なのです。
「何となく…」「ちらっと聞いたことが…」程度になっているのが現状なので、現時点までに公表されている情報を、今日はお届けしたいと思います。
目次
変更点は大きく分けて3つです。
①理科・社会の試験時間が40分から50分に変更
②数学・英語において、取り組み易い問題の比率を増やす
③数学・英語において、学校の判断により、例外的に問題の一部に応用的な内容を含む「学校選択問題」を実施できるようにする
以上3つが主な変更点です。
それでは、今回の変更にはどのような目的があるのか、そしてこの変更が生徒たちの入試の対策にどのような影響を与えるのか。これらについて説明していきたいと思います。
①理科・社会の試験時間が40分から50分に変更
今回の理科・社会の変更の目的は、高校入試を新大学入試制度に即した形にするためです。文部科学省は、この新しい制度への改革の中で「学力」を次のように定義しています。
『基礎的な知識及び技能』
『それらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力の技能』
『主体的に学習に取り組む態度』
という3つの重要な要素から構成される「確かな学力」のことを指す
それに対して、教育委員会のHP上で、次のような記載があります。
学習指導要領に示された思考力・判断力・表現力等の能力をみる問題に対して…
キーワードは「思考力・判断力・表現力」です。まさに、新大学入試で求められている能力と合致しています。
また、このような「思考力・判断力・表現力」をみる問題はすでに他都道府県の公立入試で出題され始めています。
例えば、東京都の社会の問題で資料を活用し記述する問題が出題されています。※図1参照
図1)東京都 社会の問題
これまで理科・社会の問題は知識を暗記し、それを答えていけば6割程度の点数はとれていました。
しかし図1をご覧のとおり今後はそれだけでは通用しません。「資料を読み取り、考え、気づき、説明する」という能力が必要になります。だから試験時間も40分→50分へと変わるわけです。
②数学・英語において、取り組み易い問題の比率を増やす
「取り組みやすい問題の比率を増やす」とありますが、今までの入試問題はどのような割合で出題されていたのでしょうか。
下の表は昨年度の入試問題を難易度ごとにまとめたものです。
【H.27年度 数学・英語の難易度】
数学
難易度 | A【易】 | B | C | D | E【難】 | 合計 |
点数 | 20点 | 17点 | 18点 | 10点 | 35点 | 100点 |
問題数(%) | 5問(23.8%) | 4問(19.0%) | 4問(19.0%) | 2問(9.5%) | 6問(28.6%) | 21問(100%) |
↑難易度Eの問題の割合が高い。
英語
難易度 | A【易】 | B | C | D | E【難】 | 合計 |
点数 | 24点 | 29点 | 13点 | 16点 | 18点 | 100点 |
問題数(%) | 9問(29.0%) | 8問(25.8%) | 4問(12.9%) | 5問(16.1%) | 5問(16.1%) | 31問(100%) |
↑難易度Aの問題が多いがその大半は「リスニング問題」
※難易度(正答率)
A…80%以上
B…60%以上80%未満
C…40%以上60%未満
D…20%以上40%未満
E…20%未満
数学からみてみましょう。
一番の特徴は、難しい問題の割合が非常に高いことです。「埼玉県の数学は難しい」というのはよく知られた話です。そのため、上位の子は、この数学の出来に大きく左右されます。
逆に下位の子は、数学で差がつくことがあまりありません。最低限の難易度AとBの問題だけ(計算問題や小問集合等)を対策すればよかったからです。
そこで、下位や中位の子たちのために「②取り組み易い問題の比率を増やす」という改善策が打ち出されました。
ただし、そうすると今度は上位の子の差がつかなくなります。差がつかないということは合否が決めづらいということです。
そのために「③学校選択問題を実施する」ことで対処することになったのです。
次は英語です。
英語は数学に比べてバランスがとれている感じがしますが、実は1つ大きな問題点があります。それは難易度Aの問題がほとんどリスニングの問題であるということです(9問中7問がリスニング)
つまり、それ以外の問題で下位の子が点数をとれる問題がほとんどないのです。そこで、数学と同じように取り組みやすい問題を増やすことになったわけです。
③数学・英語において、学校の判断により、例外的に問題の一部に応用的な内容を含む「学校選択問題」を実施できるようにする
埼玉県の教育委員会のHP上では、サンプル問題が用意されています。そこから改善の意図を読みとることができます。
図2)数学 問題サンプル
数学 「学校選択問題」サンプル
図2は、数学の問題の違いです。計算問題でレベルの違いがはっきりとわかります。
下位の子は今まで通り基本的な問題がしっかりできれば大丈夫ですが、上位の子は高度な計算力を要する問題をこなさなければなりません。
では、この学校選択問題はどの学校で出題されるのでしょうか。HP上では、3月末に公表するとの記載がありますがおそらく偏差値60以上の上位校は採用してくるでしょう。
また、図3は英語の問題のサンプルです。新制度ではリスニングではない問題で非常に簡単な問題が用意されています。単語がわかっていれば解ける問題です。
図3)英語 問題サンプル
この変化によって、ますます上位の子と下位の子で受験に対する対応の仕方が大きく異なってきます。
上位の子はハイレベルな問題への対策を増やさなければなりません。ところが中学校がそのような問題を授業中に扱っていなければ別に対応を考えなければなりません。
下位の子は、中1や中2の基本の問題を絶対にできるようにしておかないといけません。中3になってしまうと、もう中1や中2の復習をする機会は作れません。
今後も新情報が公表され次第、随時このブログでお知らせしていきます。
アップステーションでは、個別に合わせてこの新しい試験への対応を行っていきます。