社会の改訂ポイントは全部で3つです。

①「記述式」が更にボリュームアップ

②日常生活との結びつき

③知らないではすまされない!SDGs

一つずつ詳しく見ていきましょう!

「暗記系科目」…一昔前まで社会や理科の特徴として言われていた言葉です。

用語や年号を頭に詰め込んでおけば点数が取れる、「一夜漬け」が通用していた時代が理・社には確かにありました。

しかし最近の入試を見渡すと記述形式問題が目立ち、その配点は既に全体の約3割を占めています。

この傾向は全国的に見られ教科書改訂と相まって今後更に加速していくことが予想されます。

 

では「記述式」とはどんな問題のことをさすのでしょうか。地理の分野で扱う「時差」を例にとってみましょう。

従来は地点Aと地点Bの時差を問う問題が主流でした。

時差は経度が15度ずれる毎に1時間発生しますので、このタイプの問題は「経度の差÷15」をすれば答えを出すことができます。しかし最近では

 

アメリカのIT企業がインドに支部を設けている理由を「時差」の観点から答えなさい。

 

のように、自分の言葉で記述しなければならない問題がトレンドになっています。従来の教科書にもこのような問題は載っていましたが今回の改訂でその量がボリュームアップした形です。ちなみにこの問題の模範解答は

「アメリカでIT産業が栄えている地域といえばシリコンバレーでありインドとの時差は約13時間である。例えばアメリカにある本部から夜のうちにプロジェクトのデータを送信すればインドでは朝からその続きを進められるため、実質24時間体制で開発を進めることができるため。」

 

こんな具合になります。もちろん、記述をするためには大前提として知識が備わっていることが「必要」です。

ですがそれだけでは「十分」とはいえません。覚えた知識をもとに自分の考えを組み立てる思考力、そしてそれを文章におこす表現力が求められます

今回の改訂は理科と同様に、社会も「暗記科目」というイメージを捨てるタイミングだと言えるのかもしれません。


日常生活とのむすびつきは他の教科でも見られる特徴ですが、それが最も色濃く反映されている教科が社会です。

例えばある公民の教科書では次のようなリアルな場面が載っています。

 

・電話で注文した宅配ピザは届いてからでもキャンセルできる?

・ネットで買ったカバン、実物を見たら思ったよりサイズが小さかったという理由で返品は可能?

 

他にもクレジットカードや電子マネーの仕組みなど、新教科書には消費者として知っておくべき知識が多数登場します(これを消費者教育といいます)。

例えば「子供が家族のスマホを使って勝手に高額商品を購入していた」「知らないうちにゲームの課金に何万円も支払われていた」等のトラブルを最近多く見聞きするようになりました。

これらを未然に防ぐため、また、身近な事象を取り上げて学習意欲の向上につなげるために消費者教育は重要なテーマとして取り上げられています。

まさに、授業で学んだことがそのまま実際の生活に活かされる「結びつきの強い」構成になっていると言えるでしょう。


SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは…

Sustainable(サスティナブル)…持続性のある

Development(デベロップメント)…開発

Goals(ゴールズ)…目標

の頭文字を取って作られた造語

◆日本語では一般的に「持続可能な開発目標」と訳されることが多い

◆環境問題や格差問題など、全世界共通で取り組むべき17の目標(Goals)を表す

◆2015年に国連で採択

◆2030年までの達成を目指している

 

現在この17の目標達成のために世界中の企業や団体が様々な取り組みを行っています。

そして忘れてはならないのが、SDGsは近年の中・高・大すべての入試で一大ブームとなっており、全教科に登場する最もホットなキーワードになっているということです。

 

実際どのような活動が行われているのか見ていきましょう。

 

身近なものでいえば2020年7月から始まったレジ袋の有料化やプラスチックストローの削減が挙げられます。

最近ではドリンクバーにストローを置かないお店が増えましたがこれらはいずれも「海の豊かさを守る」というSDGsに沿った取り組みの一つと言えます。

その他、「ユニクロ」に設置してある「衣類のリサイクルボックス」や障害を持つ子供たちも健常児と同じ場所で遊べるよう遊具に工夫が施された「インクルーシブ公園」、また、文具メーカーの大手である「パイロット」は海に捨てられたプラスチックのごみから作られたボールペンを2020年12月に発売するなど、SDGsは実社会のあらゆる分野に広がりを見せています。

※インクルーシブ(inclusive)…「包括的・包み込む」の意味

 

教育分野に目を向けると、2017年に東大の入試でSDGsをテーマにした小論文の問題が出題されました。

SDGsの中から関心のあるものを1つ選択→現在どのような問題が起きているかを説明→解決につなげるために入学後どんなことを学ぼうと計画しているかを述べなさいという問題です。

全国の入試のトレンドを司る東大がこのようなSDGsド直球ともいえる問題を出したのをきっかけに、各地の中・高・大学入試で同テーマを扱う問題は増加の一途をたどっています。

このように、周りを見渡すと意外と身近なところにSDGsは浸透しており、その認知率も全世代で着実に上昇しています。

特に10代は2020年時点で43.9%と最も高い数値となっているのはやはり入試での出題による影響が大きいでしょう。

 

SDGsはもはや「知らないではすまされない超重要なキーワード」の一つです。

普段の生活の中で「これもSDGsの一つかな」「これはSDGsでいったら〇番にあたる活動だな」という意識を持ってみると良いかもしれません。