理科の改訂ポイントは全部で3つです。
①過程を重視
②イラスト・マンガを多用
③読む量・書く量も増加
一つずつ詳しく見ていきましょう!
理科に限らず従来の教科書といえば「△△すれば〇〇になる」と予め「正解」が与えられているものが主流でした。
「石灰水は二酸化炭素と混ぜると白く濁る」
「リトマス試験紙は酸性に触れると赤、アルカリ性に触れると青に変わる」
これらは定番の知識として覚えさせられたものです。
一方新しい教科書ではあえて「正解」を載せず、そこにたどり着くまでの「過程」を重視した作りになっています。
ここで大事になるのが「どうすれば?」という考え方です。
「どうすれば石灰水は白く濁るのか?」
「赤色に変化したリトマス紙はどうすれば青色になるか?」
このようなアプローチを繰り返すことで
(こうすればいいのかな…?)
(このやり方だとどうだろう…?)
と課題に対し仮説を立てることが習慣化されます。
仮説を立てたら正しいかどうか実際にやってみる。もし違っていたら別のやり方を試してみる…このプロセスは将来社会に出た時に大いに役立つ経験となります。
考えてみれば世の中は「答え」のない課題ばかりです。
例えば将来自分のお店を構えた時、「どうすればお客さんが来てくれるか」や、世界に視野を広げてみれば「どうすれば貧困の格差を減らせるか」等、現実の社会は「こうすれば絶対こうなる!」という正解がどこにも存在しない問題で溢れています。
そこで大事になるのはやはり仮説を立て、試行錯誤を繰り返し、自分で答えを探し出すという過程です。
新しい教科書では理科の学習を通してこのような姿勢を育成するねらいがあるのです。
理科は5教科の中で好き嫌いが最もはっきりと分かれると言われています。
その理由の一つが「目に見えないものを扱うから」です。
例えば電気の流れ(そこに何ボルトの電圧・何アンペアの電流が発生しているか)や化学反応(酸素と水素が結びつく様子)等は実際に肉眼で見ることはできません。図や式を通して想像するしかないのです。いわゆる「目に見えないものをイメージする力」が理科の得意・不得意を左右すると言っても良いでしょう。
そこで、新しい教科書では理科の世界をよりイメージしやすいようにイラストやマンガが多く用いられることになりました。
例えば中1のある教科書では4人のクラスメイトが「塩・砂糖・小麦粉はどうすれば区別が付くか?」という課題に対して話し合う場面が載っています。その中でキャラクターたちが「ルーペで拡大して見てみたら何か違いがあるかも」や「水に溶かして温めてみたらどう?」といった意見を交わしていますが、このようにマンガ形式になることで各段にイメージしやすくなっているのがお分かりになると思います。
目に見えない世界を扱う理科は、他の教科よりも読みやすさを意識して作られていると言えるでしょう。
イラスト・マンガが増える一方で読む量・書く量にもかなりのボリュームアップが見られます。
これは中3で出てくる「天体の動き」の章末問題ですが、どこの入試問題?と見間違えるほど難易度がアップしています。
まず目を引くのが問題文の長さです。
見開きのうちほとんど1ページがAさん・Bさんによる対話となっており問題を解く以前にこれを読解しなければなりません。理科の知識だけでなく国語の読解力も求められています。
実際の問を見ても
「Aさんに分かりやすく伝わるようBさんのセリフを会話文を完成させなさい」
「実験結果を予測しなさい」
など自分の考えを文章で答えるいわゆる記述問題が大半を占めています。
一昔前までは理科=暗記科目というイメージが定着していました。確かにまずは思考の材料となる十分な知識・用語を身に付けることが必要です。しかし新しい教科書ではそれだけに留まらず、覚えた知識を自分の言葉できちんと使いこなせているかも求められているのです。