数学の改訂ポイントは全部で3つです。

①日常生活との結びつき&合教科

②「データの活用」が増加

③「論理的思考」が増加

 

一つずつ詳しく見ていきましょう!

 数学の勉強をしていると「現実の世界では見たことないもの」に遭遇することが多々あります。

●四角形ABCD上を毎秒2cmの速さで動く点P…

●学校へ向かった弟を自転車で追いかける兄…

●池の周りを反対方向に走る太郎と花子…

これらはまさに数学あるあると言ってもいいかもしれません。

 ただ、確かに現実世界には存在しないかもしれませんが「抽象的な概念を数式で表す」という数学的思考の育成においては動点Pも弟を追いかける兄も決して無駄なものではありません。しかしイメージが掴みづらく「こんなの勉強したって何になるんだ…」「普段の生活で出てこないじゃん…」と思いたくなるのも事実です。

 そのため、新教科書では従来型の問題も残しつつ「日常生活との結びつきを意識した問題」「イメージが掴みやすい問題」の割合が増えることとなりました。

 例えば

●一次関数(中2)を使って「桜の開花日」を予想しよう

●「合唱コンクールの各クラスの発表時間・休憩時間を何分にすれば時刻通りに終えられるか」を、方程式(中1)を使って算出してみよう

 このように日常生活と数学が融合したリアリティのある問題です。

 この流れは大学入試改革が本流となり高校入試や今回の教科書改訂にも波及しています。現に2021年1月に行われた大学入試共通テストでは100m走のストライドとピッチという現実世界(スポーツ分野)を題材にし、タイム・ストライド・ピッチの関係を数式で表しなさいという問題が出題されました。今後もこの傾向はますます強まっていくでしょう。

 また、中3で習う「相似」の冒頭には「どれくらいの大きさの鏡を買えば全身をうつせるか」という問題を通し理科で習う「光の反射」にも触れています。このような他教科とのミックスを「合教科型」といいます。これからは「数学を上げたかったら数学だけじゃなく他の教科も勉強しなければならない」ということが言えそうです。


 新しい教科書では1年生から「データの活用」に関する単元が追加されます。現代社会において「データを読み取る力」「データから課題や価値を引き出す力」はまさに必須の能力です。

 例えば2020年の春以降新型コロナ感染者数のグラフを目にしない日はありません。政府も関係者も何かしらの対策や発令を出す場合に用いるのは客観的なデータです。これがもし「感染者が何となく増えてきた気がするから自粛してください」「だいぶ減ってきたと思うので解除します」といった曖昧な説明では誰も納得してくれません。最近では私立大学を中心に新たに「データサイエンス学部」や「情報処理学科」等を新設する大学も増えているほどその重要性が高まっています。

 新しい教科書ではこれを日常生活の事象と絡めて取り扱っています。

 例えばある中学1年の教科書には

 「待ち時間が10分だった人が6人、20分だった人は4人、30分だった人は1人……この病院の待ち時間を予測するには平均値を使うべきか」

 という問題が掲載されます。私たちの頭の中には平均=多くの人にあてはまるという意識が潜在しています。例えば平均60点のテストといえば「みんな60点ぐらいだったんだな」という印象を持つのではないでしょうか。ところが、実際にこの病院の平均を計算してみると該当者が一人もいない「40.6分」という数値が出てきます。このことから必ずしも平均値=多くの人にあてはまるとは言い切れないことが分かります。

  一方、「20分以下」が33%、「30~40分」が3%、「50~60分」が64%という見方をするとどうでしょう(この考えを累積度数といいます)。こう考えれば「大体1時間ぐらい見ておけばいいかな」という予測が立てられますので、ここで適切なのは平均値ではなく累積度数だと言えます。このような視点を1年生から身に付けさせたいという意向が新教科書には反映されています。


 最近よく聞く「論理的思考」という言葉。

 論理的とは「筋道の通った」という意味です。例えば山登りをするとき

「この道を通った方がいい!だってそう思うから!」という意見と

「この道は傾斜がきついし途中で休憩できる場所もないからあっちの道にしよう」という意見

 どちらが論理的かと聞かれれば答えは一目瞭然です。

 新しい教科書にはこのような力を強化する問題が散りばめられています。

 実際の問題を見てみましょう。

 中2の教科書では次のような問題が登場します。

 ・AB=CD

 ・ADとBCは平行

この条件を満たす四角形は全て「平行四辺形」である…これは正しいですか?間違っていますか?という問題です。

 正解は上の図のように「台形」の場合も考えられるため「間違っている」となります。このように「本当に正しいのか?例外はないか?」を検証することを「反例」といい今回の改訂で新しく取り入れられることになりました。

 データを活用する力、論理的に説明する力、これらは日常生活においてはもちろん、将来社会に出た時にビジネスの場面でも必ず役に立つ能力です。あまり難しく考え過ぎずクイズ感覚・間違い探しのような感覚で解いていくことがポイントです。

 次回は「国語編」をお届けします!乞うご期待☆