前回のブログでこの春から新しく小学5・6年生で英語が正式な教科になることについて触れました。今回の「後半」では実際の授業内容や教材について詳しく見ていきたいと思います。

 

小学校英語の授業はこんな内容になる

最大の特徴は、何と言ってもまず「英語嫌いをなくそう」という方針で構成されていることです。

 

中でも特徴的な

①「三単現」は出てこない

②日常生活に密着した単語

③4技能学習

の3つについて見ていきましょう。

 

① 「三単現」は出てこない

英語が正式な教科として始まるのは、ご存知の通りこれまでは中学校からでした。

「現在進行形」「未来形」「不定詞」「比較級」……数多くの文法事項を学ぶ中で最重要にして最難関と言える単元があります。

 

それが「三単現」です。

 

もはやトラウマのようにこの言葉を聞いただけで嫌な気分になる方もいるのではないでしょうか…

これは中学1年生の序盤でいきなり登場してくるのですが、これまで多くの中学生たちを「英語嫌い」の谷底へ突き落してきた難所です。

ここを乗り越えられるかどうかで英語が得意になるか否かの9割は決まると言っても過言ではない、まさに登竜門のような文法です。

現に私も中1の時見事にこの穴にはまり、得意と信じていた英語の歯車が一気に狂い始めました。中2の夏に猛特訓して何とか取り戻したのをよく覚えています。

 

「三単現」とは「三人称単数現在形」の略です。

 

これを理解するには、

・英語の世界では「わたし」のことを「一人称」、「あなた」のことを「二人称」、「わたしとあなた以外」のことを「三人称」と言う。

・主語がI(=わたし)とYou(=あなた)以外、つまり「三人称」でしかも単数(=1人・1つ)だった時、一般動詞の最後に「sまたはes」を付ける。

というルールを習得しなければなりません。はっきり言って中1の1学期に習うレベルではないです。しかしこれを正しく理解していないとその後はまさに「総崩れ」となってしまい、

He  play  soccer. (正しくは He  plays  soccer.)

Do  she  like  cats? (正しくは Does  she  like  cats?)

といった「よくあるミス」を連発することになってしまいます。

 

そこで、新しく始まる小学の英語(以下「小学校英語」と呼びます)では「三単現」はスル―しよう!ということが決まりました。

この方針、私は個人的に大賛成です。もし従来の中学校で習う英語をそのままスライドさせていたら英語嫌いの子がもっと増えていたと思います。これが特徴の1つ目です。

 

②日常生活に密着した単語

「英語嫌い」になってしまう原因の一つが「こんなの覚えたって絶対使わないじゃん!」という単語があまりにも多い事です。

これは忘れもしない、私が中学2年生だった時のこと…当時の教科書に「tadpole」という単語が太文字で出てきました。これ、どんな意味か分かりますか?

 

正解は「おたまじゃくし」です。

 

おたまじゃくしですよ!?(笑)日本語でも使う機会ほぼ0の単語です。

「おたまじゃくしは大きくなったらカエルになる」…確かそんな内容だった記憶がありますが、私は今に至るまで「tadopole」を使ったことは一度もありません。 

他にも、例えば

Is this an apple?(これはリンゴですか?)

Are you a student?(あなたは生徒ですか?)

という「よくある例文」に対して

 

「いや、そんなの見りゃ分かるがな!」

 

というツッコミをいちいち心の中で入れていました。

でもよく考えてみたら確かにこんな例文日常生活に出てきません。

普段使うことの無い単語、不自然な例文…英語の学習意欲はますます下がっていきました。

英語に限らず、勉強を通して覚えた知識のほとんどは将来使うことはありません。日常生活の中で家族が「因数分解」や「連立方程式」について語り合っている姿は不気味です。

勉強の本当の目的は実は知識を覚えることではなく、集中力と忍耐力を養うことにあります。しかし当時の私は当然そんな考えは持ち合わせていません。

そこで、このような生徒を増やさないようにするために、小学校英語では日常生活に密着した単語を多用することで「覚えることのメリット」を実感することを目指しています。

例えば「食べ物」「曜日・月」「身の回りの物」など普段の会話の中でよく使う語が多く登場します。これが特徴その2です。

 

③4技能学習

3つ目の特徴は「読む・書く」だけでなく「聞く・話す」も取り入れた授業になるという点です。

いきなり大量の文を読んだり書いたりだと中々興味を持つことはできません。やはり英語は教科である前に言語なので実際に使ってみることで身に付くものです。

そこで小学校英語は「聞く→話す→書く→読む」の流れで学習するとされており、教科書もこの順番に沿った構成になっています。中でも「聞く」「話す」の比重が重く、「読む」の割合は最も低くなっています。

従来の授業は読解、つまり「読む」が中心でした。高校受験も大学受験も、約6~7割を占めるのがいわゆる長文読解の問題です。これは歴史上、日本という国が島国であるため外国との関わりを持ちにくかったこと・鎖国により海外の文化が書物でしか入ってこなかったことに起因すると言われています。

この結果、日本はこれまで「読む」に関しては一定のレベルを保ってきました。アメリカの大学生が日本のセンター試験の英語を解いたとき半分しかできなかったという逸話がそれを裏付けています。彼らは皆口を揃えて「こんな難しい問題が解ける日本人が英語を話せないなんておかしい!」と呟いたそうです。

こういった現状に加え、日本が抱える少子高齢化の問題が絡んできます。近い将来高齢者の割合が更に増え、生産年齢人口が減っていくのは間違いありません。その中で国力を保ち労働力を確保していくには、国内だけでなく海外に目を向ける必要性がどうしても出てきます。

小学校英語で「聞く」「話す」に重きが置かれるようになった背景にはそういう社会に対応できる人材(=英語で用を足せる人材)を育成するという国の方針があります。

 

あとは教員の質や時間枠の確保などを含め、学校の現場で滞りなく行われるか…これにかかっていると思います。

 

では実際にはどうやって授業を実施していくようになるのか、詳しく見ていきましょう。

 

現時点ではまだ対応がバラバラ

2018年度からは「移行措置」 2020年度から「本格実施」

このブログでは2018年度から小5・小6で「小学校英語」が始まると話してきました。

ですが、実は全国で一斉に始まるというわけではありません。正確には2018年度からは「移行期間」がスタートし、全国的に始まるのは2020年度からということが公表されています。詳しく見ていきましょう。

まず、2020年度に小学校の学習指導要領が改訂されます。

これは小学校英語よりも前に公表されていました。「学習指導要領が改訂」=「教科書・教わる内容・時間割・授業時間数…」これらが全て一新されることを意味します。

当初の予定ではこのタイミングでよーいドンで小学校英語もスタートという方針でした。そのため、2020年度以降は年間70コマ分という時間枠もちゃんと確保されています。

しかし、文部科学省(以下、文科省)は小学校で英語を習うことの意義を見直し、

「英語に関しては2020年度を待たずに早いタイミングで導入してもいいだろう」

という判断を下したのです。これにより、2018年度から始まる小学校英語は「先行実施」という位置付けになりました。そこから2020年度の本格実施に向け徐々に慣らしていく…という計画です。

 

この「早期から小学生にも英語を学ぶ機会を」という意図は賛成できるものです。

ただ…

ここで問題になるのが「先行実施」期間中の時間割の確保です。

実は文科省は先行実施の期間においても「小学校英語」用に最低でも年間15コマの時間枠を設けてというルールを定めました。

「本格実施」以降ではちゃんと年間70コマという時間枠が設けられていますが、先行実施ではそれ用の枠がありません。本来想定していないことだったので当然と言えば当然ですが…

では今の時間割の中にどうやって15コマ分の授業を入れるのか。文科省が提案している対策として「モジュール授業」というものが挙げられます。

これは1時間目の授業が始まる前やお昼休みの後に15分の枠を設け、そこで英語の学習をしようというものです。これを3回行えば45分=1コマ分の授業時間になります。

 

確かに計算上はそうなりますが… うーむ、個人的には「苦肉の策感」をとても感じます。

 

果たして15分しかない授業時間で何をどこまで教えられるのか…これは学校ごと、自治体ごと、教員ごとでかなり大きな差が生まれそうです。

 

教材もバラバラ

「差」といえば、教材についても先行実施の間は明確なルールが決まっていません。

小学校英語用の教材として「We can!」という教科書が2018年度に間に合うように発行されますが、従来の英語で使われていた「Hi, friends!」を使っても構わないとされています。

何ともアバウトな方針ですが、この裁量は各自治体に委ねられているため「We can!」を使う学校、「Hi, friends!」を使う学校、あるいは併用する学校と、様々なパターンが出てくることになるでしょう。

 

ここでもやはり問われるのは教員の質だと思います。

 

授業時間や教材ももちろんですが、そもそも「聞く」「話す」が一定レベルでできる教員がどれだけいるのか、疑問を拭えません。

私が中学生の時の英語の先生は、先生間でかなりレベルに差があったのを覚えています。ある先生はネイティブのようなきれいな発音、ある先生はいわゆる「カタカナ英語」のような片言の発音…それは子どもの目から見ても明らかでした。

加えて「話す」が苦手な子やグループアクティビティに参加できない子への対応はどうするのかを含め、特に2018年度からの先行実施においては大きな混乱が生じることが予想されます。

だからこそ、学校でつまずいてしまったところのフォローや、余裕を持って授業に臨めるための先取りができるよう塾」というサポート体制を用意しておくことが憂いなく英語を学ぶために必要なことだと思います。

大事なのは制度が新しくなるとか教科書が変わるとか、そういった「枠」の話ではありません。その枠の中で子どもたちが振り回されることなく、着実に英語の力を身に付けていけるにはどうすれば良いかを考えることです。

小学5年生も6年生も人生で1度きりです。今回の小学校英語の導入を通して、私達は塾としてこの意識を忘れずに指導にあたっていかなければならないなと強く実感しました。 

 

この4月から新しく5年生・6年生になるご家庭や英語の授業に不安を抱えている方はどうぞお気軽にご相談ください。お子様の小学校生活を一緒に支えていきましょう!

 

まとめ

・小学校英語は「英語嫌いを防ぐ」というテーマに沿った内容になっている。

・2018年度からは「先行実施」で2020年度から「本格実施」。

・先行実施期間は時間割や教材も自治体ごとでバラバラ。混乱に巻き込まれないようにサポート体制を敷いておくことが大切。

 

☆以下の文科省のホームページより「We can!」のサンプルが閲覧できます。著作権上ここに転載することはできませんでしたので、ぜひチェックしてみてください。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/123/houkoku/1382162.htm

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