「単語が覚えられないのですが、どうすれば良いですか?」

学年末テストを控えたこの時期、生徒からよくある質問です。

単語を覚えるにはどうすれば良いのでしょうか。

ズバリ答えは、覚えるまでやり続けることです。脳に障害などがない限り覚えられないということはありえません。

すると、単語を覚えられない最大の理由は「覚えるまでやっていない」ということになるのではないでしょうか。

 

次はとある先生と生徒との対話です。

先生「じゃあどうやって単語を覚えてるの?」

生徒「10回ずつ書いてます」

先生「じゃその後は?」

生徒「えっ、何も…」 

 

この段階で、この生徒は「覚えるまでやっていない」ことが分かります。「自分が覚えられているかどうかの確認」をしていないからです。

このような子が数多く存在する理由のひとつが、実は小学校の時に出される宿題にあるのです。

小学校の時には単語の宿題はありませんでしたが、漢字の宿題がありました。どんな宿題が出ていたでしょうか。きっと

『ノートに10回ずつ書いてくる』

といったものだったはずです。

これを日々繰り返すと、無意識のうちに「覚えるには10回ずつ書けばいい」という思考が染み付きます。

これでは本来「覚えること」が目的であるはずなのに、「10回書くこと」が目的となってしまい書き終わった瞬間に記憶からスコーンと抜け落ちてしまうのです。

本当はこの後に「覚えられたかどうかテストをしてみる」必要があります。しかしそれは宿題になっていないので、そこまでやれる子は極まれです。

紙で隠して自分でテストをし、覚えられていないものは再度書いて練習し、そして再びテストをして覚えられているかチェックして…このサイクルを満点になるまで繰り返すことが、本当の勉強のやり方なのです。

 

「インプット」よりも「アウトプット」

実際の授業で使用している講師手作りの教材です。一方通行にならないよう穴埋め形式になっているのが特徴です。

勉強には「知識を頭の中に入れる=インプット」と「頭の中にある知識を使う=アウトプット」の2種類があります。

時間をかけて勉強しているのに成績がなかなか伸びない子の多くは、勉強が「インプット」に偏っているように思えます。しかし、記憶を定着させるには「インプット」よりも「アウトプット」の方が重要であることが脳科学の研究から明らかになっています。

東大の教授で脳科学を研究している池谷裕二先生が書かれた『受験脳の作り方』という本の中で次のような実験をしています。

『スワヒリ語とよばれる全く知らない言語の単語を40個覚える。その後テストをし、間違えた問題を4つのグループ(図1参照)に分かれそれぞれのやり方で覚え直し、そして満点になるまでテストをする』

図1

というものです。

果たしてどのグループが一番覚えるのが早かったでしょうか。

結果は、「ほとんど同じ」でした。

ならばどのやり方でもいいと思うかもしれません。ところが、この実験には続きがあります。

 

『1週間後に再テストをする』

 

その結果が図1の下の段の正答率です。グループ1・2と3・4で大きく差が開いているのが分かります。違いは何かというと、「再テストのやり方」です。

グループ1・2は再テストの際「すべての単語」のテストをしていた、つまりグループ3・4より多くのアウトプットを行っていたのです。

この実験結果からわかることは、脳は「インプット」よりも「アウトプット」を重視しているということです。

同じ時間勉強したとしても「インプット」ばかりやっている子と「アウトプット」もやっている子とでは、記憶の定着に大きな差が生まれます。ぜひ、アウトプットを積極的に取り入れていくように意識してみてください。

 

多くの個別指導塾は「インプット」に重点を置いているのが現状です。それが個別指導の強みと考えられているからです。私たちももちろん丁寧なインプットを心がけていますが、授業中必ずアウトプットも取り入れるようにしています。

「じゃあ今先生がやった通りに今度は自分でやってごらん?」

「この空欄には何が入ると思うか考えてごらん?」

コーチから教わるだけではサーブを打てるようにはなりません。教わったことをもとに自分の手で「やってみる」ことで初めてサーブが打てるようになります。

勉強も同じです。

単語を覚えるなら10回書くよりも10回テストした方が確実に覚えられます。

「この情報は使う機会がこんなに多いのか…ならば覚えなければ」と脳に判断させることです。

そしてこれは単語に限らず漢字・年号・公式等、全ての科目に通ずる鉄則なのです。

 

まとめ

・単語を覚えられない原因は「覚えるまで再テストをしていない」こと。

・正しい単語の覚え方…自分でテストをしてみる→間違えた問題は書いて練習→その後すべての単語を再テスト→間違えた問題は書いて練習…このサイクルを「満点」になるまで繰り返すこと。

・インプットよりもアウトプットが大事。10回書くよりも10回テストした方が記憶は定着する。

 

参考文献 『受験脳の作り方 脳科学で考える効率的学習法』(新潮文庫)著者:池谷裕二