昨今教育に関するニュースの中で大きな話題となっているのが、2020年度から順次全国の小中高校で実行される新学習指導要領です。

中でもその柱となる「アクティブラーニング」の導入に関しては既に色々なところで議論がなされ、多くの関心が寄せられています。

実際に耳にしたことのある方も多いことと思いますが、今回はこのアクティブラーニングについて定義からアップステーションの見解まで詳しく解説していきたいと思います。

 

アクティブラーニングとは

文部科学省によると、アクティブラーニングは以下のように定義されています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称

つまり、従来の「教師→生徒」への知識伝授型の授業ではなく、生徒たちが積極的に意見を言い合ったり協力して調べものをしたりする授業の方法を指します。例えばグループワーク、ディスカッション、体験学習等は全てアクティブラーニングの一種です。そういえば、私たちも子どもの時そんなことをやっていた覚えがあります。学級委員を決める話し合い、グループ発表、校庭の池にいる生物を調べよう、駅前の放置自転車はどうすれば無くなるか等…これらも全てアクティブラーニングです。ですから、「アクティブラーニングの導入」と聞くと何か新しいことが始まるの?と思われがちですが実はそうではなく、今までも行われていた発表の時間や話し合いの時間の割合が増えるという方が適切な捉え方です。

このアクティブラーニングが2020年度より順次全国の小中高の主要教科の授業で本格的に導入されていくということが公表されています。今書店に足を運べば「アクティブラーニング型授業 国語編」「やってみようアクティブラーニング 数学編」といったタイトルの書籍が教員向けコーナーにズラリと並んでいます。

「本格的に導入」というのは、現在でも既に導入している事例が少なくないからです。例えば埼玉県のとある県立高校では、3人組のグループに分かれて一人ひとりが違う知識や情報を持って話し合い、グループで1つの結論を出し発表するという授業を取り入れています。

また、講義は授業の最初に短時間で済ませ、残りの時間を全て演習にあてるという方法を取り入れている小中学校もあります。演習時間中生徒はおしゃべりも立ち歩きも自由というのがミソで、クラス全員が演習問題を解けるようになることが目標なため早く分かった生徒が他の生徒に教えたりします。下の「ラーニングピラミッド」という図の通り、先生の一方的な講義を聞くよりも、生徒同士で教えあったり、学びあったりすることでお互いの理解もより進み生徒たちの主体性も育つという考えに基づいた手法です。

 

↑この図はアメリカの「ナショナル・トレーニング・ラボ」という研究機関が発表したものです。

これによると学習定着率(どれだけその単元を理解できたか)は「講義を聞いているだけ」だと5%、「グループ討論」をすると50%、「人に教える」ことができるようになると90%になるとされています。もう50年以上も前のデータですが、何となく納得してしまう話です。「方程式の解き方を理解できたどうかは、人に教えることができるかどうかで分かる」ということですね。きっと、アクティブラーニングの導入もこの延長線上にあるのだと考えられます。

 

アクティブラーニングのねらい

ところで、そもそもアクティブラーニングは何故導入されることになったのでしょうか。

様々な背景がそこにはありますが、1つ挙げるとするならば「グローバル化」が大きく関わっていると考えられます。

今、世界に多くの日本人が出ていっています。一方、日本にもたくさんの外国人が入ってきています。そして企業は世界規模での競争にさらされるようになりました。

日本企業はこれまでアジアでの雇用を人手に、質の良い製品を安く大量に生産することで成功してきました。しかし既に少子高齢化が進行した今、日本の生産年齢人口は減り始めています。そして周辺のアジア諸国は経済成長を遂げ、これまでの日本のお株を奪う質の良い製品を安く生産するライバルになりました。家電量販店に行けば中国製のパソコンや電子機器を多く見かけます。アジア諸国はこれまでの「生産の下請け」の立場から「ライバル」になり、また、消費大国にもなりつつあります。それに伴い日本のグローバル競争における位置づけは大きく変化しました。

これからの日本に期待されることは、安いコストで大量に生産することではなく、新しい価値を生み出すことに変化しています。そしてそのために必要なのは単純な知識の詰め込みではなく「課題に対して自ら考え答を見出す力」に他なりません。この力を養成するための手段こそが、アクティブラーニングなのです。アクティブラーニングを通して様々な人の意見を取り入れ、自分の考えを発信し、共に解決策を見出していく…つまり、アクティブラーニングはこれからの日本経済を支える(グローバル社会の中で生き残っていく)一手とも言えるでしょう。

 

アクティブラーニングの危険性

「グローバル社会を生き抜くため」…この方向性そのものは現代社会において避けては通れないものですし、否定するものではありません。しかし、ただ学校教育全体がアクティブラーニング一色に染まることには大きな危機感を感じます。

「課題に対して自ら考え答を見出す力」が重要なことは十分理解できますが、しかしその前提には十分な知識、いわゆる「基礎学力」が必要です。土台部分が十分身に付いていなければ自ら考えることも答を出すこともままなりません。材料なしに料理を作り上げることはできないのです。

小・中学校時代はこの基礎学力をしっかりと身に付ける時期です。それがなければ柔軟な発想もありません。少なくともこれまでの日本は知識伝授型(いわゆる詰込み型)の教育で世界トップレベルの学力水準を保ってきました。「タバコ屋のおばちゃんが暗算でお釣りを渡すのが当たり前」であることが日本の強さでした。確かにグローバル化は止められませんし、それに対応する教育が急がれているのも分かりますが、だからと言って「アクティブラーニング」という美名のもと基礎学力が疎かになってしまうのは本末転倒ではないでしょうか。

加えて、学校の先生への研修やマニュアルが滞りなく行き渡るのか、そもそも話し合うことや発表することが苦手な子への対応はどうするのか…等課題は山積しています。生徒もそうですがその前に人前で発表するのが苦手な先生もたくさんいる気がしてなりません。

以上を踏まえると、アクティブラーニングの主要教科への導入は高校以降でも充分ではないのかと考えます。「分数の計算ができない大学生」は、笑えない実話です。まずは基礎学力の徹底を図る…それが小・中学校時代には絶対に必要です。どれだけ時代が変わっても、これは変わることの無い真理だと考えます。

 

アクティブラーニングに対するアップステーションの考え方

したがって、アップステーションでは今後も基礎学力の定着を徹底して行っていきます。丁寧な知識伝授・地道な反復練習を大事にしていきます。

そしてその上で生徒に「質問」をしてあげることが、アクティブラーニングへの対応策になるのではと考えています。

子どもには(大人もそうですが)上から押し付けられるよりも自分で考え出した答の方が圧倒的に行動に移せるという法則があります。

「単語をちゃんと覚えなさい!」よりも、「じゃあ今度のテストに向けては何をしたら良いと思う?」『うーん…単語を覚えようかと思う』の方が本当に単語を覚えてくれます。

自分で出した答だからです。最初はトンチンカンな返答が返ってくるかもしれません。即効性はなく時間がかかるかもしれません。しかし、質問を投げかけ、自分で考えさせ、答えを出させ、それに沿った行動をさせ、成功体験を積ませてあげる…こういった習慣を身に付けることがアクティブラーニングへの対応策となり、自ら考え答を出す力となり、これからのグローバル社会を生きる子供たちに向け周りの大人たちが日常的にしてあげられることだと考えます。

 

 

まとめ

①アクティブラーニングとはグループワークや体験学習等、生徒が意見を出し合ったり協力したりして問題解決に取り組む生徒参加型の授業のこと。
②アクティブラーニングのねらいはグローバル社会に対応するための力(=自ら考え答を出す力)を養うことである。
③主要教科へのアクティブラーニングの導入により、肝心な「基礎学力」の定着が損なわれる危険性がある。
④基礎学力が無くてはアクティブラーニングの授業は成立しない。地道な基礎学力の定着を行いつつ、生徒に「質問」をすることで自ら考える力を養っていくことが重要。