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皆さんこんにちは!アップステーション統括責任者の柏木です。

さて、いきなりですが問題です。

自然科学館の相談コーナーに小学6年生の児童から次のような質問が寄せられた。

「夏休みの自由研究で野菜から出る水の量を測りました。同じ重さの塩と砂糖を振り掛けたら砂糖の方が多くの水が出ました。理由を教えてください。」

問1. この自然科学館のボランティアの相談員になったつもりで、この質問に答えよ。
問2. 同様に、より優れた自由研究になるようどんな実験を追加したら良いかアドバイスせよ。

↑こちら、京都大学の推薦入試の中で実際に出題された問題です。

「大学入試」といえば難しい公式を使った問題や長文読解をイメージされると思いますが、最近の入試ではこのような「自分の考えを発信できる力」(以下発信力)を問う問題が増えています。某大学の入試では「1+1=2 なぜこうなるかを説明しなさい」という問題が出題されたとか。受験生たちが真面目に1+1を解いている姿はこっけいに映るかもしれませんが、この背景には従来の1点を競い合う点数重視のやり方ではなく、受験生の学力を総合的に判断したいという国の意向が反映されています。

そしてこの波が、今中学生の指導要領にも押し寄せています。

 

2016年度より、中学校の教科書が改訂されます。

2016年度より中学校の教科書が「改訂」されます。今の小6生は中1生になった時、今の中1生は中2生になった時、今の中2生は中3生になった時、全く新しい教科書が手元に届きます。新教科書への改訂の目的は、まさに冒頭で述べた「発信力」の向上です。それでは、具体的にどのような改訂が行われるのかを見ていきましょう。

2016年度の改訂は「小改訂」

教科書の改訂は、その度合いによって「大改訂」と「小改訂」に分類されます。今回の改訂は後者です。前者の顕著な例としては2002年度の「ゆとり」、2012年度の「脱ゆとり」が挙げられるでしょう。

【教科書総ページ数の推移(主要教科書メーカー平均)】

改訂年度 5教科総ページ数 従来との比較
1997年度 2,987ページ 小改訂↓
2002年度(ゆとり) 2,711ページ ※完全週5日制 大改訂↓
2006年度 3,122ページ 小改訂↑
2012年度(脱ゆとり) 4,026ページ 大改訂↑
2016年度 4,305ページ 小改訂↑

この表から分かるように、ゆとりによる学力低下を招いてからは教科書のボリュームは増加の一途を辿っています。正確に言えば「ゆとり以前の状態に戻っている」と言えるかもしれませんが、今回の改訂で出された「4,305ページ」というボリュームはかつての(ゆとり以前の)ページ数を上回っています。この数値だけ見ると「勉強内容がそんなに増えるの!?」と思われるかもしれません。お兄ちゃん・お姉ちゃんをもつご家庭では、特に2012年度の大改訂(脱ゆとり)の際に教科書がいきなり分厚くなったのを覚えている方も多いと思います。数学では「解の公式」、理科では「イオン」が復活し、英単語の数も一気に増えました。
しかし、実は今回の改訂では勉強する内容自体は現行とほぼ変わりません。では、一体どこが改訂されることになるのでしょうか。

 

「アクティブラーニング」と「合教科型」

今回の改訂の目玉は、「アクティブラーニング」と「合教科型(がっきょうかがた)」です。

アクティブラーニングとは…

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Active Learning=「自発的な学習」の名のもと、「話し合いの場」を促すページが全教科に追加されます。
【例】
・数学…わざと間違えた解法を教科書に載せ、「どこが間違っているか話し合ってみよう」等のページが追加。
・社会…「コンビニの新しいお弁当を企画しよう」等のページが追加。

 

合教科型とは…

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合教科型=教科の枠を超えた学習のことを指します。
【例】
・理科の教科書に小数の計算方法などを丁寧に記載(理科と数学の合教科)
・数学の教科書に北極の氷の面積の推移を載せ環境問題と関連(数学と社会の合教科)

合教科型の学習を教科書に載せる背景には、間違いなく2020年の「大学入試改革」が影響しています。センター試験が廃止され、教科の枠を超えた問題が出題されるということが発表されている(具体的な問題例等は未発表)ため、中学校の頃から教科の好き嫌いをなくし5教科全てが関連し合っているという意識を持たせるねらいがあります。

 

改訂により引き起こされる2つの二極化

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先生の指導レベルの二極化

このように、今回の改訂で変更されるのは「学習内容」そのものではなく、それをどうやって学ぶか、すなわち「学習方法」であるといえます。ただ、学習方法が変わるということは当然学校の授業のやり方が変わるということです。それまで先生が黒板で説明していたことが「さあ皆で話し合ってみよう」に変わることになります。

ここで気を付けなければいけないのは、教科書の改訂はあっても学校の授業時間数に変わりはないということです。果たして、今までと同じ時間枠の中でアクティブラーニングや合教科型の授業を滞りなく実行できるのか、現場の先生たちへの落とし込みや研修は漏れなく行き渡っているのか、話し合いが苦手な子たちへのケアはどうするのか…より高度な技術が、現場の先生たちには求められます。その結果、先生たちの間で指導技術に格差が生じ分かりやすい先生と分かりにくい先生の二極化が顕著に表れることが考えられます。

2012年度の脱ゆとりの際、教科書内容があまりにも激増したため、最後まで終わらず年度の終盤にものすごいペースで無理矢理進めた先生が続出しました。あの時、多くの学校が教科書改訂の混乱に飲み込まれていたことが思い出されます。

子どもたちの学力の二極化

もう1つ留意しておくべきことは、今の小学6年生(新中1生)にはより大きな負担がのしかかるということです。多かれ少なかれ、教科書改訂による現場の混乱は不可避です。それに加え新中1生たちは中学進学という大きな環境の変化にも順応しなければなりません。小学校と違い、中学校の授業は「教科担任制」です。授業の度に先生がコロコロ変わります。6時間授業の日は1日6人の先生に会わなければなりません。当然6人いたらそれぞれ教え方、黒板の書き方、雰囲気の作り方、宿題の出し方が異なります(もう少し統一してほしいと思うのですが…)。子どもたちからすると、1人の先生と触れ合う時間が圧倒的に短くなります。ですから人間関係も構築しづらく、その上先生側は慣れない新教科書に四苦八苦…こんな状況が容易に想像できてしまいます。

この結果予想されるのは、より顕著な学力の二極化、いわゆる学力格差です。

中学3年生の模試の成績と人数の分布を見てみると、例えば100人で平均点が60点のテストの場合、一昔前は「平均点近くの子が多かった」ため山の形をした分布図でした。しかし最近では「90点以上の子が50人、30点以下の子も50人。だから平均が60点」という結果が多く、分布図はまるで「2こぶラクダ」のような形になっていることがあります。今後はこの二極化がより顕著に、そしてより早期に現れるのではないかと考えます。話し合いが苦手な子や発信するのが苦手な子は学校の授業から早々に脱落してしまうおそれがあるからです。もしかしたら1年生の1学期のテストで早くも「2こぶラクダ」に…なんてこともあるかもしれません。

 

そんな中、何よりも大事になるのは子どもたちのストレスをいかに減らせるか、不安なことを相談できる環境をどれだけ整えてあげられるかだと思います。先に述べた通り、特に新1年生が感じるストレスは大きく、その状態で学校の授業を受けて勉強しても成果は望めません。ですから、まずは学校の授業で分からなかったこと、うまくいかなかったことを吐き出せる場があり、そしてそれに対する具体的な改善策を示してくれるパートナーこそが、スムーズな中学校生活を送るための要です。

そしてそんなパートナーになることこそが、今私たちのような個別指導の学習塾に求められていることなのだと自覚し、子どもたちの指導にあたっています。